橋本絵莉子
3rd Full Album
2026.7.22 (wed) ON SALE
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SLRL-10180
¥3,500(税込)
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ご購入者先着特典
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【セット内容】
“特製OVER LIFE BOX”
詰め合わせセット
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橋本絵莉子『OVER LIFE』
インタビュー【前編】
——ニューアルバム『OVER LIFE』がいよいよ7月22日にリリースされます。前作『街よ街よ』から2年3ヵ月ぶりとなりますね。
橋本:気がついたらそんなに経っていたかという感じです。『街よ街よ』をリリースしてわりとすぐに新しく曲作りを始めていたので、自分ではあんまり期間が空いたなっていう感覚はないんですけど。
——たしか『街よ街よ』のツアー(“街よ、見街よ、良い街よツアー 2024”/2024年10月開催)のときに、当時は「オンリーミー(仮)」というタイトルで今作にも収録されている「オーバーライフ」の原型となった曲を新曲として披露されていましたよね。MCでも「本当は少し休んでもいいかなと思っていたけど、気づいたらリリースの翌月くらいには曲を作ってた」とおっしゃっていて。
橋本:そうなんです。最初は間を空けようって思っていたんですけど、案外すぐに作り始めていました(笑)。
——『街よ街よ』が完成した直後は少し休みたい気持ちもあったんですか。
橋本:休みたいというよりは、作曲に向かう力、次に向かうエネルギーがまだない気がしていたんです。とにかく『街よ街よ』を形にできてよかったっていう気持ちでいっぱいで、次をどうするとかちょっとまだ考えられないなって。
——そこから「やっぱり作ろう」と思えたのは何か理由が?
橋本:最初は興味本位だったんですよ。まだそんなにやる気に満ちていない、フワッとした状態で曲を作り始めてみたらどうなるんだろう、みたいな。『日記を燃やして』や『街よ街よ』では過去のストックから持ってきた曲も結構入れていたので、もし次にアルバムを作るとしたら全部新曲にしようというのは、ぼんやりとイメージしていたんです。ストックには頼らずゼロから作り始めようって。ただ、そうなるとかなりエネルギーが必要になるから、ちょっと間を空けたほうがいいかもしれないと最初は思っていたんですよね。でも、この状態でどんな曲ができるんだろうっていう興味が湧いてきてしまって(笑)。
——いかにも絵莉子さんらしい(笑)。
橋本:だから実験みたいな感覚です。いつもは「よし、作るぞ」と思ってから作り始めることが多いんですけど、そうじゃないときに作った曲がどういうものなのか自分でも見てみたくなって。それで最初にできたのが「電車でガタゴト」だったんですよ。2024年の5月だったかな。
——本当にリリースから間もないですね。ちなみに今回のアルバムは絵莉子さんのキャリア史上初めて曲先で作った楽曲がメインの作品であることが前もってアナウンスされていますが、「電車でガタゴト」の時点から曲先だったのでしょうか。
橋本:「電車でガタゴト」は最初、詞先でした。なんの気なしに詞先で作って、一旦は形にしたんです。だけどそのあとに作った曲がほとんど曲先だったから、ある程度までデモが揃った段階で「電車でガタゴト」を改めて振り返ってみたときに「まだいけるな」と思えたのでサビ以外を全部、楽器のアレンジとかはそのままでメロディと歌詞を作り直したんです。
——つまりサビだけ詞先のまま残して、他を曲先で作り直した?
橋本:そうです、そうです。楽器のアレンジを聴きながら、新たにメロディを作って、それに合う歌詞を乗せて。全然違うものになりましたね。
——そもそもバンド時代からずっと詞先だった曲作りを、なぜ曲先でやろうと思ったのでしょう。
橋本:「電車でガタゴト」を詞先で作ったあと、ちょっとウロウロしちゃったんです。このままだとまた詞先でアルバムを作ることになるのかなって。でも『街よ街よ』のときに1曲だけ曲先で作った曲があるんですけど、それがすごく楽しかったのを思い出して。
——「慎重にならないか」ですね。
橋本:はい。せっかく今回はストックを封印して新しい曲だけで作ることにしたわけやし、だったら曲先がメインのアルバムにするのも面白いかもって思ったんです。ただ、最初は全然できませんでしたけどね(笑)。「よし、曲先でいくぞ」って思ったはいいけど、やっぱり難しいんですよ。チャレンジしては「めっちゃ難しい! これじゃアルバムなんてできへんかも」って挫けて、詞先に戻ってみたりもして。でも、それだと前と一緒やんって思い直して、またチャレンジして、をしばらく繰り返していました。
——それでも曲先というスタイルに新たな可能性を感じた?
橋本:それもあったと思います。「慎重にならないか」を曲先で作っていたときの“先の見えなさ”が面白かったんですよ。「まさか、こんな曲になるとは!」っていう驚きがすごかったんですよね。詞先だとすでに顔が見えている状態で進んでいく感じだけど、曲先はどう着地するか、まったくわからないのがめちゃくちゃ新鮮で。6割ぐらい自分でアレンジしてからデモをメンバーさんに投げて、そこから一緒にさらにアレンジしていくんですけど、そこまでの一人作業も曲先だと楽しいということに気づいたんです。どんな曲になるかわからない状態で進められるから。そういう感覚って詞先だとあんまりないんですよ。
——知っている人に似合う服を着せてあげるのが詞先だとしたら、曲先は思いがけず出会った初対面の人のために洋服屋さんを探すところから始める、みたいな。
橋本:そうそう! まさにそんな感じ。そのときその場でどうするかっていう感覚が味わえるんです。
——それにしても、いきなり曲先とは思い切りましたよね。
橋本:チャレンジしても全然できないっていうときに気持ちが折れなくて本当によかったです。作りながらも「もう曲先、やめようかな? やめてもいいよな?」ってめっちゃ思っていたんですよ。でも、曲ができたときはものすごく嬉しくて、その嬉しさで「もう1曲」「もう1曲」ってどんどん進んでいけて。
——曲先でいちばん最初に形になった曲というと?
橋本:「EMO」です。2024年の夏ぐらいにできたんですけど、そのときは本当に嬉しかったですね。「やった! できた!」って一人で沸々と嬉しさを噛み締めながら、これならアルバムもいけるかもって思いました。兆しが見えたというか、すごく自信になって。
——とはいえ、アルバム1枚分の楽曲をまっさらな状態から作っていくなんて普通に考えたら気が遠くなりそうですが……。
橋本:たぶん今までとは作り方がまったく違うから、大変だと思わなかったんでしょうね。ギターとは違う楽器を弾いている気楽さ、初心者だからこその気楽さで「あ、こんなやり方もあるんや」「こんなこともできるんや」ってやっていけたというか。
——なんだったら失敗しても構わないし。
橋本:そう、全然いいやって。実際、メロディまではできたけど、どうしても歌詞が乗らない曲もあったんですよ。でも、那是それでストックしておけばいいから、「はい、次!」みたいな(笑)。悩むのは今じゃないと思ってサクサクと進めてましたね。すごく好きって思った曲はできるだけ粘りましたけど。
——絵莉子さんが曲先で作る場合、何が取っ掛かりになるんでしょう。
橋本:私はやっぱりギターですね。その日の自分が弾きたいコード、好きな響きから始めてました。同じようなコードでも「こっちの指で弾いてみよう」とか、コードだったらもう何をしてもいいわけですよ。文字の制限がないから好きなように弾けるし、自由にメロディも付けられるんです。で、大体のテンポとか雰囲気とか「いいかも」ってなったらパソコンに録音して、それを聴きながら、言葉にもならないような鼻歌で歌ってみるんです、何回も。そうしていくうちに、どんどん言葉になっていくというか……例えば「なんとなくこれっぽいな」っていう単語が一つ見つかると、そこからフワッと広がったりして。
——こういうことを歌おうと思って歌詞にしていくのではないんですね。
橋本:そういうのはまったく考えなかったです。メロディに似合いそうな言葉とか、フンフ〜ンって歌っているうちに自然と出てきたひらがなを集めて、それをあとで整えるという感じでした。でもメロディまでは意外とスムーズなんですけど、歌詞を乗せるのはめっちゃ難しいんですよ。日本語ってメロディに乗せると急に野暮ったくなるんですよね。デタラメで歌ってるときはいい雰囲気なのに。
——たぶんそれ、日本のミュージシャンのほとんどが最初にぶち当たる壁ですよ。ロックミュージック自体が欧米由来だから、かっこよく日本語を乗せようと思うとすごく大変だってみなさん、よくおっしゃっていて。
橋本:そうなんですね! まさにそれです。めっちゃ思いました。
——20年以上のキャリアにしてようやく今(笑)。
橋本:本当にびっくりしたんですよ。メロディに乗せようとすると急にダサくなってしまって「え、こんなに?」って(笑)。その関門をくぐり抜けられる言葉を見つけるまでが、本当に難しかったですね。これはいいぞって思える日本語が見つかりさえすればもうこっちのものなんですけど。
——見つかるまではもうずっと言葉のことを考えているんですか?
橋本:メロディさえあったら頭のなかではいつだって歌詞のことを考えられますから。別にパソコンに向かっていなくても、紙に向かっていなくても、何をしていようと言葉はずっと探せるので。
——曲先で作ることによってご自身の歌詞に変化を感じたりはしましたか。
橋本:まだ全然辻褄の合っていない、とりあえずメロディに乗ってるだけの段階では、今までにないなって思っていたんですよ。でも、いざ意味のある歌詞にして、何回も歌っていくと、どれが曲先で詞先か、自分でもよくわからなくなりますね。意味のある歌詞に整えた瞬間に「もともと、こういう曲でした」みたいな顔をするんです、その曲自身が。
——しれっと(笑)。
橋本:そう! 詞先で作った「私、こういう曲なんです」っていうのと同じような顔にどんどんなっていくんです。ただ、詞先のときは歌詞を書いて、メロディを付けて、アレンジして、っていう明確な順路があるんですけど、曲先の場合はそれがなかったんですよね。まだ私が慣れてないからだと思うんですけど、完成に至るまでが一直線じゃないというか、行き詰まったら他の曲の作業に移ったりもするし、あちこちフラフラしながらできていくんですよ。だから私自身もどうやって作ったかあんまり思い出せなくて。この歌詞ってどうやってできたっけ? みたいな不思議さは今までにない感覚でした。
——途中で別の曲も並行して作ったりとか、詞先のときはなかったですか。
橋本:あんまりないですね。詞にメロディをつけるのもわりと早いほうだったので、めちゃくちゃ悩むようなこともそんなになかったし。
——聞けば聞くほど興味深いです。あえて得意技ではない方向へとご自身を駆り立てていった、その動機の源泉をますます知りたくなるというか……『街よ街よ』というアルバムは相当にエネルギーを費やした作品だと思いますし、それを完成させたことである種、やり切った、出し尽くした気持ちになられたのかなとか、勝手に想像したりもするのですが。
橋本:そういうのもあったかもしれないです。『日記を燃やして』と『街よ街よ』を作って、じゃあ次はどうする?って考えたときに今までとは違う作り方をしたいって思ったんでしょうね。ただ曲作りをするんじゃなく、今までと違ったチャレンジがあったほうが自分のエネルギーが向かいやすかった気がします。
——それって、このままでは同じことの繰り返しになるな、それだと新しいものは生めなくなるんじゃないか、みたいな不安や危機感でしょうか。
橋本:そういう、自分が成長できないかも、みたいな建設的な危機感じゃなくて、むしろ自分のなかにエネルギーがないことへの危なさというか。しばらく曲作りに燃えることができないかもしれない、このままだと何もやらないのでは……?って。『街よ街よ』を作っていたときに、まだデモの段階なのに、曲がすっかり古くなってしまったように感じた時期があったというお話をしたと思うんですけど。
——はい。『街よ街よ』のインタビューをさせていただいたときに、そうおっしゃっていましたね。
橋本:曲と自分の距離が離れてしまったというか……そんなふうに感じるのが初めてだったんです。その経験が私にとってはかなり大きくて、『街よ街よ』で は乗り越えられたけど、もう一度、これまでと同じ姿勢で歌詞から作っていくのは難しいかもしれないという気持ちになってしまって。それでも、とりあえずこの状態で曲ができるかどうかやってみようと思って作り始めてみたら、どんどん曲先という新しいものにチャレンジする面白さに染まっていったっていう。
——そうするうちに曲先の「EMO」が生まれて、エンジンがかかって。
橋本:やる気になるまで待たずに、とりあえずでもいいからって曲を作り始めて本当によかったと思いますね。
——やっぱり生粋のミュージシャンでありアーティストというか、曲を作らずにはいられない人なんでしょうね、絵莉子さんは。ファンのみなさんも今、「よかった!」って胸を撫で下ろしていらっしゃると思います。ところで、曲を作っている期間、サポートメンバーの曽根巧さん(G.)、村田シゲさん(B.)、北野愛子さん(Dr.)とニューアルバムの話はされていたんでしょうか。
橋本:みんなには秘密にしていました。『街よ街よ』のツアーのときも次のアルバムのことは黙っていて。あ、でも曽根さんには言ったかな。「今、曲先でやってるんだよ」「ええやん」みたいな会話をした記憶がありますね。でも、まだどうなるか自分でもわからなかったので、詳しいことは話さずにいたんです。
——でも、のちに「オーバーライフ」になる「オンリーミー(仮)」をそのツアーで披露されましたよね。それに関しては?
橋本:「新曲をやります」「やろうやろう!」みたいな感じ(笑)。「新曲、いいやん!」って一緒にアレンジしてくれました。面白いなと思ったのは、ライブでやるためのアレンジってレコーディングのアレンジとは違う脳みそになるんですよ。当たり前だけど、やっぱりライブっぽいものになるっていうか。レコーディングのときは、ここにハットがいるかいらないか、キックを入れるか入れないか、めっちゃ細かいところまで一つひとつ詰めて考えるんですけど、「オンリーミー(仮)」の場合は、レコーディングはまだしないけどライブではやりますという状態でデモを渡したから、お客さんを前にして聴かせるためのアレンジにどんどんなっていくんです。だから「オーバーライフ」になってからも“先にライブでやった感”がめっちゃ出ていて。
——その後、いざアルバムを作るとなったときのメンバーのみなさんはどんな反応だったんでしょう。
橋本:ホンマに三者三様でした。愛子さんは「めっちゃ好き! 春のせいめっちゃ聴いてる!」って言ってくれたし、曽根さんは「意外と曲先だってわからないな、それくらい馴染んでる」って言ってくれて。シゲさんからは「コミュニケーション」のアレンジを一緒にしたときに「うわ、変な曲〜!」って言われました(笑)。たぶん褒め言葉だと思うんですけど(笑)。
——デモをお渡しするときに「こんな曲になってます」「これはこういうイメージで作りました」みたいな説明はするんですか。
橋本:いや、まったく(笑)。曲のデモと歌詞だけを渡して、あとはスタジオに入ったときにそれぞれの解釈をすり合わせていく感じです。
——メンバーとのアレンジ作業によって化けた曲があったりも?
橋本:いっぱいあります! 例えば「春のせい」をアレンジしているとき、曽根さんのギターフレーズはストリングスのイメージで作ったんだよっていう話をしたら、シゲさんが「実際に入れたらいいんじゃない?」って言ってくれたんですよ。
——それでチェロ奏者の吉良都さんにオファーをされたんですね。
橋本:はい。私一人だったらその発想はきっと出てこなかったと思います。実際、チェロが入ると入らないでは全然違って。チェロって音は低いけどベースとはまた違った音像なので、すごく面白かったですね。
——メンバーのアイデアで曲の世界がさらに広がるって素敵です。
橋本:本当に。自分では着地したと思っていたけど、そこがゴールじゃなかったんだって気づかされるのが楽しいんですよね。本当に何気ない一言からそうやって派生していくし、そのアイデアを試してみたい、聴いてみたいってワクワクできるのも嬉しくて。
——絵莉子さんが自分一人ですべてを完璧に仕上げたいタイプのアーティストではないからこそ味わえる醍醐味でしょうね、それは。
橋本:そうだと思います。私が作った最初の段階のデモを聴いたら「何これ!?」ってびっくりしますよ、きっと(笑)。私、デモを全然綺麗に作らないんです。パソコン上での作業って、突き詰めたらどこまでも整えられるじゃないですか。でも、それだとキリがなくなっちゃうので、もう粗いままでメンバーさんに渡しているんです。それを各自で解釈してもらって、そこから一緒にアレンジを進めていくから想像通りになんてならないし、だからこそ変わっていく喜びがあるんですよね。しかもみなさん、とにかく上手い方たちなので、その喜びと驚きたるやものすごくて。自分の曲がこんなに素敵なものになるのか!って毎回、本当に感動します。
——歌以外のベーシックなレコーディングに関しては、今回も全員「せーの」の一発録りですか。
橋本:はい。できる限りそうしています。
——一発録りにこだわる理由はなんでしょう。
橋本:純粋に「せーの」に勝るものはない気がするんです。勢いとかノリとか、お互いのリズム感もそう、一緒に演奏してるというだけで全然違うんですよ。あと、私はそのときに出た音が良ければ、それがすべてだと思うタイプなので、そのほうがわかりやすいし、やりやすいというのもありますね。曲ができるまではいろいろ試したいけど、レコーディングで「この音、いいな」と思えたら、それ以上の可能性は探らなくていいというか。もちろん、メンバーさんが「ちょっと待って、こっちも試したい」って言ったら「よし、やろう」ってなりますけど。
——キリがなくなるのが、あんまり好きではない……?
橋本:そうなんです(笑)。あれもいい、これ也不错ってなると決められなくなっちゃう。そうなるとドツボにハマって時間だけが過ぎてしまうので、いかに直感的に「これ、いい!」ってなれるかが大事なんですよね。
インタビュー・テキスト:本間夕子
★続きはインタビュー後半へ!
『OVER LIFE』収録曲を1曲ずつ解説します。